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貴方だけに溺れたい
第7章  貴方に逢いたい

あの時の屈辱は、今でも忘れられない。
1月の後半、3回目の飲み会が行われた日だった。

振り返れば、呆れるほどの愚行だったと思うが、当時の葵はまだ宴会の準備には慣れておらず、宴が始まってからも料理や酒類を持って会場に出入りしていたのだ。
そして嫌々ながらもお酌をしたり、すすめられた酒を飲む事もあった。
警戒する事は無かった。内心では面倒だったり、召使いのような扱いを受けている事に苛立ちを感じてはいたが、少なくとも恐怖を感じる事も無かった。

その時も、葵は一度配膳を終わらせた後、時間を見計らってから追加のビールを持って宴会場へと戻っていた。
今は人が集まる前にパックごと持って行き、後は智之に任せているが、当時は丁寧にお盆に載せて運び、酒に酔った男達の中を歩き廻り、時には片膝をついてビールを並べたりと不安定な姿勢でいる事もあった。

そしてその男達の座るテーブルでも、葵は不安定な体勢でビールを並べ、急いでその場を離れようとしていたのだ。
もともと嫌いな4人組だ。
年齢は30前後で智之にとっては年下の幼馴染み達でもあるが、葵から見れば、名前も知らない、ただのド田舎のダサいヤンキーで、話す内容も振る舞いも下品な男達でしかない。
それに彼らは、それ以前から道端で会えばニヤニヤ笑いながら葵を見ていたし、実際にくだらない言葉を口にして葵をからかったりもしていた。酒癖もかなり悪い。

当然ながら葵はそんな連中は無視していた。
目も合わせないし、愛想笑いすら見せる必要も無く、全身で彼らをシャットアウトしているつもりだった。
しかしそんな態度すら、彼らにとっては大した問題では無かったようだ。

『奥さんすげぇかわいいよね』『友達紹介して』『智之君と何処で会ったの?』『奥さんもっと派手な服着れば?』『今まで何人くらいとヤッたの?』『ねぇねぇ、何カップ?おっぱい何カップ?』

特に"アキラ"という男は、何かにつけて葵に触ろうとしてくる、一番質の悪い男だった。

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