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貴方だけに溺れたい
第7章 貴方に逢いたい
健一郎には感謝している。
あの時に彼が現れなければ、いつまであの男達から辱しめを受けていただろうし、力ずくで押さえ込まれたまま弄ばれ、まるで見世物であるかのような恥辱に耐え続けなければならなかったはずだ。
その後、健一郎に促されて部屋に戻った葵は、身体に残る不快感と憎悪によって嘔吐した。
智之が追って来た時にはキッチンの流しに顔を突っ込んだまま震えていたはずだが、彼はそんな妻の姿を見て何も言わなかった。否、気まずさで言えなかったのだろう。
ただ無言で葵の背中を擦ろうとはしたが、そんな行為は白々しいだけで、葵は吐き気に耐えながらその手を振り払っていた。
『また、ふざけてるだけかと思ったんだよ』
『はぁ?』
『俺の席から葵は見えなかったし、誰も教えてくれなかったからアイツらだけで騒いでるのかと思ってたんだよ。よくある事なんだよ、葵が知らないだけで』
『……』
『そんなに嫌だったんなら、忘れればいいじゃん。なんでいつまでも覚えてるの?』
後に"助けてくれなかった"事を抗議した時、智之は自分に非はないとばかりにそう答え、逆に"不快だった出来事"をいつまでも覚えている葵を非難した。
そして終いには、追加のビールを運ぶ事を拒否した葵に対して"わがままなんだから"と言ったのだ。
勿論、わがままで結構。なんの問題も無い。
あんな屈辱を受けた上に、夫の下らない言い訳を聞かされるくらいなら、"わがまま"だろうが"ダメ嫁"だろうが構わないと思っていた。
しかしそれから暫くの間は、あの男達が部屋まで来るのではないかという恐怖はあった。
健一郎にお礼を言う為に宮本家に行った際に、一緒にいた弥生から他にも被害を受けた人がいるという話を聞き、奴等は部屋にまでは来ないという話も聞いていたが、やはり直ぐに安心出来るものでは無かったのだ。
そして漸くアキラ達からの恐怖から逃れられた頃、竹村が部屋に来るようになっていたのだが……。