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貴方だけに溺れたい
第7章 貴方に逢いたい
それから約4ヶ月、その間に葵はウォーキングを始め、ブナ林の中を探索したり東屋で景色を眺めながら独りの時間を過ごすようになっていた。
そんな自分自身を思い返せば、僅にだが変化はあったと思う。
否、変化と呼ぶよりも以前の自分を振り返り、徐々に取り戻しているといった方が正しいのかもしれない。
葵はブナ林の中を歩いている間に、何度も昔の自分を思い出すようになっていた。
好奇心の向くままに、道なき道を進んでいく自分。
もしも10代の頃の自分がこのブナ林を見付けていたら、出入口や道など気にする事なく入り混んでいただろう。
道は自分で作るものだと分かっていたから、"迷うかもしれない"なんて不安よりも、とにかく前に進んでいたはずだ。
迷う可能性すら考えない"お気楽な子"でもあったけれど、現在の自分からすれば充分に挑戦的だと思える。
そして転ばないように迷わないようにと慎重に歩く自分よりも、軽い足取りで遥か先を歩く過去の自分を想像したりもした。
制服のスカートを短くして、当時流行っていたルーズソックスにローファー。
背中まで伸ばした髪はミルクティーブラウンという色だっただろうか、偏差値の低い女子校で校則も緩かったから見た目ばかり気にしていたけれど、当時の自分はそれで良かったのだ。
たとえ母親に『ヤマンバみたい』とか『お尻まるだし』『そのうち禿げるわよ』と呆れられても、自分の好きなファッションを貫いていたし、他人がどう思おうと関係無かった。
それに当時の自分は強かった。
若気の至りとか根拠なき自信ではあったけれど、理不尽な事には立ち向かい、妥協なんてしなかった。
虐められていたクラスメイトを助けた事もあるし、校内でも目立つグループに属していた自分が標的になる事も無く、たとえ標的にされたとしても、売られた喧嘩は買うタイプだ。勝つまでやっていただろう。
しかし大人になって振り返ると、ちょっと恥ずかしい小娘だったかもしれない。
勿論、虐めや卑怯な行為を許さずに行動していた事は誇りに思うが、好戦的でトラブルも多く、その度に親や周りの大人達を困惑させていたのだから。