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貴方だけに溺れたい
第7章 貴方に逢いたい
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智之とは出会い系のアプリで知り合った。
日常生活にはもう出会いは無いと思っていたし、合コンに参加するような年齢でも無ければ、単純に時間の無駄だと考えたからだ。
勿論"出会い系"と名の付くものには如何わしい目的のものもあり、葵自身も慎重だった。
実際に登録してから暫くの間は明らかにセフレ目的や勧誘系のメッセージが送られてきて、まともな出会いを求める方が困難だった。
智之からのメッセージが届いたのは、鬱陶しい勧誘がおさまった頃で、同時に葵自身がアプリに飽き始めた頃でもあった。
『初めまして。俺も映画好きです。オススメあったら教えてください』
当時、葵のプロフィールには趣味を映画観賞と記してあった。
現在は映画を観る機会も無ければ観ようという気持ちにもならないが、当時の葵は月に1度は映画館に行き、ネットでも2~3本は観ていたのだ。
単純に趣味の合う人……という認識だった。
それまでに届いていた膨大なメッセージに疲れてもいたせいか、智之からのそれは至極普通でまともな物に思えたのだ。
実際に智之はごくごく平凡な同い年の青年だったし、それは現在も変わらない。
しかし当時の葵は、智之の明るさや楽観的な面に隠れた違和感には気付こうとはしていなかった。
彼に対して、好奇心が芽生えなかったからだろう。
葵は本当に好きな人とは、付き合えないと思っていた。
付き合うどころか、緊張して話すらまともに出来ないと思い込み、無意識にも話しやすい相手__自分と似たような相手を選ぶようになっていた。
だから話しやすく、趣味の合う智之と付き合う事が自然で気楽だと思えたのだ。
『俺と付き合って下さい』
1ヶ月ほど電話での会話を交わした後に会い、3度目のデートの後に交際を申し込まれた時、葵は特に何も考えないまま応じていた。
ただこの時は、智之を結婚の対象として見てはいなかった。
単純に話も合うし、自分を理解してくれる優しい人というだけの感覚だったのだ。
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