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貴方だけに溺れたい
第8章 根底にあるもの
「だって私は今の森川さんしか知りませんから、どんな感じで今の仕事始めたのかなって……」
「ダイエットの話はもういいの?」
「えっと……はい……」
ダイエットの話をしているつもりは無かったけれど、なんとなく、ひとの反応を見て愉しんでいるのは分かる。
だけど根が真面目なのか、細かい事に拘らないだけなのか、直ぐに話題を切り替えてくれるのはありがたい。
比べてはいけない事だけれど、知之が同じ話を延々とするタイプだから尚更そう思う。
「わりと偶然かな。弟の練習に付き合うようになって、仕事変えたんだ。バイトだけど、なるべく早い時間に上がれる職種。そうすれば夕方から出来るから」
「え、バイトとかしてたんですか!?」
「駄目だった?」
「いえいえ、ごめんなさい。荒れてたって言ってたから、私は本当に何もしないでいたのかと……」
「ははっ、そうだね。まぁ、就職する気が無かったから、似たようなものだ」
「そうなのかな……」
「うん。まぁそれで造園業の募集があって、条件に合ってたから決めたの。あと寮完備、風呂無しの古いアパートだったけど、そこを安く借りられたから」
「……お家無かったんですか?」
「実家に居たよ。でも家は高校出た奴から自立する暗黙のルールがあったし、何よりも練習以外で弟と一緒にいると切り替えが出来ないから。練習でいくら厳しくしても、家に帰って兄ちゃんやってたら示しがつかないでしょ?」
「あぁ、なるほど……そういうものなんだ……」
「俺の場合はね。後はほら、こっそりやらないといけない事もあったから」
「ああ……あはははっ」
自分から見るなと言っておきながら、顔見ながら笑ってしまった……。
「失礼ですね。ごめんなさい……」
「意外と笑いのハードルは低かったんだな」
「……そうですね」
基本的には単純なんです。