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貴方だけに溺れたい
第8章  根底にあるもの

森川が造園の仕事を始めたのは、弟の練習に付き合う形でボクシングを再開してから3ヶ月後の事だったらしい。きっかけは至極単純なもの。
だから当初は樹木に関する知識は勿論、学ぼうという意識も無く、ただ漫然と指示された作業をこなし、頭の中は夕方からの練習内容の事しか無かったのだという。

「興味無かったからね。専門的な作業は職人がやる事だし、俺は掃除や雑用が専門。親方が寡黙な人だったから、俺はそういった環境を都合良く考えてた。恥ずかしいものだよ。植木屋なんて誰にでも出来る仕事だと思っていたし、俺は樹木の名前すら覚えなかったんだから」
「意外……」
「ちゃらんぽらん。未だに言われるよ。当時はそのうち家賃滞納していなくなるだろうと思われてたらしい」
「クビになる事は無かったんですか?」
「人手不足だったから。後はまぁ、そうならないように最低限の仕事はしてた」
「要領のいい、ちゃらんぽらん……」
「そうだね」
「……」
「クズだな?」
「そんな事は思って無いですし、勝手に変な解釈するのやめてもらえます?」
「ごめんごめん。いや、自戒をこめて」
「……本当は話したく無い事ですか?」
「そんな事は無いよ。ただ当時の自分みたいなのが今此処にいたら、俺なら黙ってはいられないなと思って。親方の話だけど、本当に物静かでね。今はたまに飲みに行って仕事の話はするけど、当時は殆ど話さなかった。ただ、そういう人だから言葉に重みがあるっていうかね……」
「……分かる気がします」
「うん。印象に残ってるのが……俺に向けた話では無かったんだけど、ただ、それがきっかけで意識が変わったとは思う」
「仕事に対する意識?」
「樹木かな……あんまりこうした話はしないから、どう説明しようか迷うけど」
「初心者でも分かるように説明して頂けると助かります」
「専門的な話じゃ無いよ。単純に言えば、"木ってすげぇんだなー!"って思った話だから」
「ふっ……」
「なんか、面白かった?」
「い、言い方が……ふははははっ」
「木ってすっげぇんだなぁー!」
「いいから進めて下さい……話を……」
「誰が脱線させてるんだ?」

私じゃ無いと思うんだけど……。

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