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貴方だけに溺れたい
第8章  根底にあるもの

「あ、トウモロコシご馳走さまでした!」

トウモロコシのお礼を思い出したのは、帰り際、駐車場に辿り着いてからの事だった。
本当にギリギリセーフ。
時刻は17時を過ぎ、森川と会ってから凡そ2時間が経過していたが、その間に思い出せなかったのは途切れる事の無い会話と、充実した時間を過ごしていたせいでもある。

しかし森川が一緒に駐車場まで来ていなければ、葵は園内に引き返し、10kmのランニングを始めている彼を探し続けていたかもしれない。
そう考えると思い出せただけでも幸いだったが、時間の経過を思えば若干の気まずさも否めない。

とはいえ森川の反応は、葵が予想していた以上に淡々としていた。

「おう」と短く応えながらSUVのリアハッチを開けると、一番奥に入っていたクーラーボックスを引き寄せながら葵を見た。
その表情は今迄と変わらない。
けれど口元に浮かべた微かな笑みと、優しく細められた目に見下ろされると、これまでずっと顔を合わせていたにも関わらず、そわそわとした緊張感が押し寄せてくる。

別に何かを期待しているわけで無い。
トウモロコシのお礼の反応が、思っていた以上に薄かったのも気にしていない。

だけど別れ際の寂しさのせいなのか、茜色の夕陽に染められた彼の髪や表情にはどことなく憂いが漂い、今までとは違う雰囲気に包まれているような気がしていたのだ。

しかしそれは、あくまで葵個人の錯覚でもあり、森川はクーラーボックスにドリンクボトルと葵から預かったお菓子の袋を入れながら淡々と続けた。

「念のため、聞いておきたいんだけど」
「え?あ、はい……」
「俺が来るまでの間、悩んでたわけでは無いの?」

その問いは、ある意味では期待外れ……否、唐突ではあった。
けれども森川と話している間に漠然と解決したような気持ちになっていた葵にとっては、それは躊躇う必要の無い質問であり、同時に自分の単純さに苦笑してしまうものでもあった。

「悩んでたけど、少し解決しました」

ただそう答えたとしても、彼にとっては不可解でしか無いだろう。



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