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貴方だけに溺れたい
第9章  喜びと切なさと、後ろめたさ

森川の隣でファイルを開いている男性一人だけがワイシャツにネクタイ。
後の5人はそれぞれにカジュアルな服装で、手元のタブレットやスマホを見つつ笑い、和やかなミーティングが行われているように思えた。

なんだか少し羨ましい。
だけど出来れば、私には気付かないで欲しい。

急がず焦らず、何食わぬ顔でその場を通り過ぎたいと思ったのは、単純に"注目されたく無かったから"でもある。

何しろまだ夏なのに長袖着てるし、明らかに公園にはそぐわない格好だ。
それに女というのは勘が鋭い。
その場にいる20代30代と思しき女性達は、何かを察したりもするかもしれない。
彼女達が森川の同僚かどうかは知らないけれど、余計な雑念ばかりが頭の中を駆け回っていたのだ。

「おはようございます」

とはいえ、森川が自分を無視しない事は、漠然と予想出来ていた。
そして彼の声に倣うように全員が葵を注目し、明るい和やかな挨拶が向けられる中、葵は戸惑いながら挨拶を返しつつ急いでその場を通り抜けた。

恥ずかしい。

何がどう恥ずかしいのか説明に難しいが、急ぎ足で広場を抜けてウォーキングコースに向かっていた。

そして少し気まずいような感覚。
それはたぶん、今回のような状況は、葵にとって初めてだったからだろう。

仕事の服装で公園に来る事は初めてでは無いが、いつもは森川しかいない。
それに会う人は殆ど、公園では顔見知りの年配の人達だし、葵がどんな格好をしていても、さほど気にするような人達ではない。

けれど自分よりも森川に近い立場にいる、同世代の同性の存在は、自分の気持ちを見透かしてしまうような気がしていたのだ。

とはいえ実際は分からない。
所詮は思い込みだ。
あの人達は仕事で来ているのだから、自分の事なんて既に忘れてもいるだろう。

松林の中のウォーキングコースを歩きつつ、葵は自分の自意識に羞恥を覚えながら溜め息を吐いていた。





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