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貴方だけに溺れたい
第9章  喜びと切なさと、後ろめたさ

さて、これからどうしょう……。

ウォーキングに来たわけでも無いのだから、いつものコースを歩くつもりは無かった。
しかしこのまま公園に居る目的も無いし、生憎、ブナ林を探索出来るような靴でも無い。
それに森川の状況を考えれば、あまり自分がうろうろとしていたら迷惑なんじゃないかとも思うし、何よりも他の人達の目が気になる。

それなら早いところ此処から移動して、デパート内のカフェで時間を潰すのも悪くは無いだろう。
幸い本は持っているし、こんな気持ちの良い日に屋内に入るのは残念だけど、他に行く場所が無いのだから仕方が無い。

途中の分かれ道で曲がり、出口へと向かう事に決めてから、緩い坂道を下りる事にした。
雨上がりの松林の中はブナ林と比べれば湿度は低いが、時折吹く風には水気を含む甘い香りが混ざっている。松の香りだ。

少しだけ歩調を緩めて歩いていくと、前方から走って来る人の姿が見えた。
黒のランニングに赤いショートパンツ。思いきって丸刈りにしてしまったのだろうと思えるその頭には赤いタオルを巻いている。その姿には見覚えがある。
ウォーキングをしている時にも時々会う年配の男性で、もはやベテランのランナーとしか思えないような日焼けとふくらはぎの筋肉持ち主だ。

男性は葵に気付くと愉しげな笑顔を見せながら右手を上げた。

「おはよう!」
「おはようございます」
「今日は気持ちがいいね~」
「はい」

男性は「じゃあね~」と言いながら走り去り、葵はその陽気さとスタミナに関心しつつ、少しだけ楽しい気持ちになりながら歩を進めようとした。

しかし後方から聞こえた男性の声に再び足を止めていた。

「よお、いいフォームだな!」
「あざっす!」

あざっす?

それは間違いなく森川の声で、振り向くと、男性と挨拶を交わしながら此方に向かって走って来る森川の姿が見えた。

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