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貴方だけに溺れたい
第9章  喜びと切なさと、後ろめたさ

『9時半頃に行くから、そこで待ってて』

指定された待ち合わせ場所に着くと、葵は自分が歩いて来た方向を伺いながら腕時計を確認した。
時刻は9時15分を過ぎたばかりだ。
8時半に家を出てから先に公開に寄り、服を着替えてからデパートの駐車場まで移動して徒歩で此処まで来た。
所要時間は約45分といったところだが、急かされているような緊張感はいまだに続いている。

昨日、森川から指定された場所は、デパートから80メートルほど離れたラーメン屋だった。
大通りから駅に向かって歩いていくと緑の看板のコインランドリーがあって、そこから脇道に入ると古い居酒屋やスナックの並ぶ道に出る。
ラーメン屋はその通りの途中にあり、今の時間は他の店と同様に、入口に"準備中"の札を提げてひっそりと佇んでいる。

森川がこの場所を選んだのは、漠然と分かる気がした。
人っ子一人いない静かな通りだ。昨日と同じ快晴の空の下でも、この一帯だけは蝉の声も聞こえずに、すべてが眠っているような雰囲気が漂う。
少なくとも"此処なら"誰かに会う事も無いだろう。

何故、地元民でも無い彼がにこんな場所を知っているのかというと、入口のコインランドリーを利用している間に散歩をしているから、らしい。

やがて大通りの方角から近付くエンジン音に気付くと、葵の緊張は更に高まった。
細い道をゆっくりと走る音は、間違いなく大型車だと分かる。
徐々に近付くその音を聞きながら、葵はそわそわとした気持ちに襲われ、無意識にも下ろした髪を手ぐしで整え、白いカーディガンの胸元から紺色のワンピースの裾までを確認していた。

しかし白のSUVが姿を現した頃、葵は自分の足元を見てある事に気付いてしまった。
7センチヒールの白いミュールだ。
色とヒールの"高さ"は問題無かったけれど、これから行く場所は薔薇の専門業者だった。
どんな場所にあるのか分からないけど、もしかしたらこの格好、場違いだったかもしれない?



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