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貴方だけに溺れたい
第9章  喜びと切なさと、後ろめたさ

助手席のドアを開けて「どうぞ」と促されるまま車に乗り込んでいた。

しかしサイドステップに爪先を乗せ、スカートが広がらないように軽やかに乗り込んだ葵の動きは、森川にとっては予測外れなものだったらしく、ドアを閉めた時の彼の口元には明らかな苦笑が浮かんでいた。

「たまには俺の期待に応えてくれ」
「はい?」
「いいや。ただの願望だ。気にするな」

ただ運転席に乗りながら呟いた彼の言葉の意味は分かっていた。
"願望"は推測でしかないが、葵は車に乗り込む際に、頭上に彼の手が翳されている事に気付いていたからだ。
車高の高い車でもあるし、足を滑らせたり、頭をぶつけないように気を配ってくれたのだと思う。

「直ぐに高速に乗るから、最初のサービスエリアで一度停まろう。平日だから目的地までは2時間も掛からないと思うけど、気になる事があったら遠慮しないで言っていいからね」
「あっ、あの、こんな靴履いてて大丈夫でしょうか?私、何も考えてなくって……。もしダメだったら自分の車にスニーカー置いてあるんで、履き替えられるんですけど」
「よく似合ってるよ」
「あ、ありがとうございます……。じゃなくて、場違いじゃ無いかなと……土の上とか、地面に靴の跡とかつけちゃうんじゃないかと……」
「……おおっ、大丈夫だよ!」
「何かおかしい事、言いました?」
「いや。育ちの良い元ギャルだなと思ってね」

車は30分ほど国道を走り、やがて東京方面へと向かう高速に乗った。
向かう場所は神奈川にある"ヨネクラ薔薇園"という家族経営の栽培業者で、主に野生種の薔薇を育苗しているのだという。
他にも社長の趣味で珍しい品種を育て、展示もしている。
森川が話していた工房では、薔薇をモチーフにした小物類が作られ、七宝焼やレジンのアクセサリーはネットでも販売しているらしい。

ちなみに靴の問題に関しては、土壌の汚染防止の為、畑に入る際は靴を履き替えるのだと教えてくれた。
その点においては意味は違うものの、確認はしておいて良かったと思う。


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