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貴方だけに溺れたい
第9章  喜びと切なさと、後ろめたさ

過去にスカートを履いた誰かが足を踏み外したのか。
そんな憶測と共に森川の恋愛遍歴が気になりもしたが、今は"森川さんの彼女"というワードだけで緊張感が倍増していく。

「1時間も掛からないと思うから」
「あ、はい」

薔薇園の入口はやはり何処にでもあるような、横に引くタイプの鉄の門だった。
しかしそこから見える園内は、剥き出しの土の地面に敷石で出来た通路が施され、手前に紺色のプレハブ小屋が2棟並び、少し距離を置いた奥には新築らしき白い豪邸が建っている。
そして反対側には大きな温室が2棟と、花のついていない苗が並ぶ畑があった。

森川は門の前に立つと、後ろに控える葵を確認してから目の前にあるインターホンに指を伸ばした。
薔薇は高価な花だ。セキュリティ対策は完璧なのだろうか。
葵自身は園内を眺め、少しでも平然としている風に見えるように努めながら、大丈夫だと自分に言い聞かせていた。

第一に、とにかく冷静に、失礼の無い振る舞いを心掛ける。
第二は森川が話していたように、真実を明かさなければ憶測でしか無い。だから堂々としていれば良いのだ。

やがてインターホンの繋がる音と共に『はーい』という明るい女性の声が聞こえた。
そして「こんにちは、森川です」と告げる彼に再び『はーい、どうぞー』と応える声。
女性の声は低くも無く高過ぎる事も無く、自然で朗らかな印象だった。

「今のは先代の奥さん」

簡単過ぎる森川の解説に頷きながら門をくぐり、敷石の上を歩きながら手前のプレハブへと向かった。

"ヨネクラ薔薇園"は親子二世代で経営しているという話は、移動中に聞いていた。
現在の社長は息子の方で、先代は4年ほど前に経営の方は引退して、今は趣味で薔薇の新種作りをしているのだという。
そして先代の奥さんが事務を手伝い、息子である社長の奥さんは生産と工房を管理している。

因みにアクセサリー販売を始めたのは社長の奥さんで、それまでは趣味でビーズやレンジを使った小物作りしていたのだが、お姑さんの提案でネット販売を始めたところ、薔薇をモチーフにした指輪やネックレスが評判になったという話だ。


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