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貴方だけに溺れたい
第3章 屈辱と悪夢
もう、いいや。
これが現実であって、どうする事も出来ないんだから……。
結局は、私はこの環境で生きる田舎の女で、森川のような人と親しくなれるようなタイプでは無い。
この環境に居る自分を知られたくは無いと思っていたけど、こうして見られてしまったのは"身の程をわきまえろ"という事なのかもしれない。
葵はもう、腹を括るしかないという結論に達していた。
森川が智之達のもとに行ってしまった以上、彼に話し掛ける事なんて出来ないのだから……。
しかし頭ではそう思っていても、最後のビールを掴む手には力が入らなかった。
いっその事、このまま何処かに行ってしまいたいとさえ思う。
それでも反面では、現状を知りたい。
森川が自分の前でどんな対応を見せるのか、この目で確かめたいとも思うのは、葵の本来の負けん気の強さのせいだったのかもしれない。
葵はお腹に力を入れ、気合いを入れるように強く息を吐き出すと、ビールを両手に抱えてキッチンを出た。
なるようになれ……。
リビングに入ると、智之達の座る側の一番端の席に立つ森川の姿が真っ先に目に入った。
智之の向かい側。
その周りに座る宮本の息子__健一郎(ケンイチロウ)達とも早くも打ち解けたように話しながら腰を下ろそうとしている。
楽しそう。そんな雰囲気はすぐに察した。
しかし、これから向かう場所だけを見て、森川の事ばかりを考えていた葵は、やはり冷静では無かった。
普段なら絶対に近付かない。
智之達の居る席の反対側に居るグループ。
何かにつけて葵に下品な言葉を掛けたり、身体に触ろうとする男達の傍を通ってしまった事にさえ気付いていなかった。
気付いたのは。
「よぉ、しっかりやれよ!」
突然聞こえた声と同時に尻を叩かれた、その衝撃からだった。