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貴方だけに溺れたい
第3章 屈辱と悪夢
「あの、ごめんなさい……。何て言うか……私ちょっと頭の中がいっぱいいっぱいになってしまってて、何をどう話せばいいのか分からなくなってしまってるんです。
……正直に言えば、森川さんが来てくれて嬉しいっていうか、ありがたいっていうか……やっぱり嬉しいんですけど、でも複雑で……。
あっ、でもそれはっ、私自身の問題であって森川さんが迷惑とかそういう事じゃ無いですから……」
迷惑なのは、自分の感情を上手くコントロール出来ない私の方だ。
貴方は少しも悪くない。
それだけは分かって欲しくて、葵は森川を見つめながら必死に説明していた。
上手く話せているとは思って無いし、支離滅裂である事も充分分かっている。
もしかしたら見当違いな弁解をしているのかもしれない。
しかし今のこの一時の自分の態度は分かっていたし、自分に情けなさを感じていたから、これ以上、そんな自分でいたくは無かったのだ。
「こんな理由で"気にしないで下さい"って言うのも失礼だと思うんですけど……気を悪くさせてしまっていたら、本当にごめんなさい……」
気がつけば、窓の外に身を乗り出して話していた。
迫ったところで思いの全てが伝わるわけでは無いのに、心や体が無意識に彼に向かっていたのだ。
しかし拙いながら必死で話を続ける葵の姿勢は、森川の表情を穏やかなものに変えていた。
彼は葵から目を逸らさず、その一語一句に対して頷きながら話の続きを促してくれているようにも見えた。
そして恐らく、葵の感情論も理解してくれていたのだろう。