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貴方だけに溺れたい
第4章  秘密

扉をロックしながらサイドガラスに映る自分を見つめ、深呼吸をする。
緊張と不安と、何故だかそれらを上回るほどの不可思議な高揚感。

覚悟はしているけれど、不安はある。
しかしそれ以上に、ただ無性に彼に会いたいという欲望のようなものが膨らんでいく感覚があった。
園内の入口に向かって歩き始めた歩調が徐々に速まっていったのは、そんな本能的な意識のせいだったのかもしれない。

森川の車は入口脇にある従業員専用の駐車スペースに2台の軽自動車と並んで停められていた。
車内に人が乗っているような気配は無いが、葵はその大きな車体に目を奪われつつ、開放された鉄製の門をくぐった。

園内は上空から見ると馬蹄の形をした遊歩道と中央の広場以外は全て森林に覆われている。
入口はひとつ。
駐車場から見て右側にある門を抜けると右側に売店があり、広場の手前には先日に森川が"事務所"と言っていた煉瓦造りの平屋がある。

ちなみにこの平屋の前には『深澤瑠璃子記念館』という看板が置かれているが、葵は未だに入った事は無く、その人物が昭和時代の女流作家だという事しか知らない。
しかし京都で生まれ育ち、その一生を京都で過ごしたという深澤瑠璃子が、なぜ関東の田舎にあるこの場所と繋がりがあるのか、気にならないわけでは無かった。
ただ葵自身、この地域の人間に対する抵抗がある為、此処に入る事に躊躇しているのだ。

記念館の脇を早足で通り過ぎると桜の木に囲まれた広場があり、葵は手前の木や反対側の雑木林、ぽっかりと空いた芝生の先へと目を凝らしながら歩を進めた。
鼓動はいつの間にか速まっていた。
ドキドキと高鳴る胸を押さえつつ、人っ子一人居ないような園内の静けさに焦りを感じる。

早く会いたい……。
何処に居るの?

蝉の声しか聞こえない蒸し暑さの中、葵はただ必死にその姿を探した。




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