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貴方だけに溺れたい
第4章 秘密
ふと、自分の推測を試してみたいと思った。
"勘"である事は自覚はしている。
けれど葵の感情には、ある種の好奇心にも似た興奮が芽生え始めていたのだ。
不安や気まずさは勿論あるけれど、それ以上に、自分の抱く森川の人間性を確かめてみたいと感じた。
ただ。
「あの、森川さん」
「ん?」
「………」
推測と勘で得た衝動に任せて話を切り出そうとした葵は、その先に続けるべき言葉を考えてはいなかった。
否、今まで考えてきたように『私と公園で会った事を誰かに話しましたか?』と尋ねれば良いと思うのだけど、そのストレートな質問に非礼さを感じてしまったのだ。
もっとやんわりとした、穏やかな言い回しは無い?
しかし突然眉間を寄せ、深刻そうな表情を向けた葵の沈黙は、森川にとっては明らかに不審な行動だったのだろう。
「どうした?」と訝しげな横目を向けつつ車を路肩に寄せたのは、葵を心配しての行為だったのかもしれないが……。
「なんで止まるんですか!?」
「そんな顔で見られてたら、何かあると思うだろ?」
確かに森川の言う通りだ。
けれど葵としては、改まった風では無く"雑談ついで"が理想だったのだ。
「……そうですね。すみませんでした」
「トイレなら……」
「違います」
それでも、話すなら今しか無いのだろう。
まだ市街地にも入らない、車も殆ど通らない林道の中だけど、エンジンとエアコンと微かに聞こえるラジオの音が静寂を紛らわせてくれていると思う。
けれど……。
「取り合えず、たいした事では無いので進みませんか?」
「断る」
「でも此処でエンジンの掛けっぱなしは……」
「そうだな。その通りだ」
「………」
少し怒っているような?
淡々と答えながらハンドブレーキを上げる森川の態度が、今までとは明らかに違って見えた……。