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貴方だけに溺れたい
第5章 枷
「やっぱり、するんじゃない……」
「途中からシタくなっちゃった。だって葵、酔うとエロくなるんだもん」
調子のいい言い訳だ……。
葵を自分のベッドに座らせた智之は、サイドテーブルのライトを点けた後に室内の照明を消した。
エアコンで冷えた空気に「寒い」と呟く葵に対して「すぐに熱くなるよ」と答えながら彼女の後ろに回り「よいしょ、よいしょ」とふざけた調子でベッドの中央にまで引き揚げる。
ムードなんてものは元から求めてもいないが、まるでコメディ映画のワンシーンのようにコミカルな動作でTシャツとスエットを脱ぐ智之を眺めていると、急速に酔いが冷めていくように感じる。
濡れるかな……。
そう考えるのは今日に限った事でも無いが、葵は淡い灯りに照らされた智之の裸体を見つめながらも、自分の身体には欲情の兆しが無い事に気付いていた。
寒さのせいもあるのだろうか。
暑がりの智之に合わせた設定温度は、葵にとっては鳥肌が立ちそうなほどの寒さで、このまま裸にされれば、"熱くなる"どころか風邪をひきそうな予感さえする。
しかしサイドテーブルに置いたリモコンに手を伸ばすよりも先に、足の間から被さってきた智之によって唇を塞がれてしまった。
「んっ……」
生暖かくぬるぬるとした感触と、仄かな苦味を含むアルコールの匂い。
無意識に眉間を寄せて呻いたのは、いきなり舌を入れられたせいだ。
けれど智之はそんな葵の"呻き"を"喘ぎ"だと判断するかのように彼女の舌を吸い、口内をかき混ぜるかのように舐め回しながらその唇や口の周りを唾液まみれにする。
下手くそ。
上手なディープキスがどんなものかは知らないが、智之の唇と意識が離れた隙に口許を拭う癖がついたのは、たぶんここ数ヶ月の間だろう……。