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あなたの背中
第4章 夏の終わりの
マンションの一階フロアからエレベーターに乗る。
7階の部屋までの間。決して広くは無いエレベーターに二人っきりになる。
「 彼氏出来た?」
「 へっ?!」
「 だから〜彼氏できた?」
「 で、出来てないけど…なんで 」
「 ぷっ…… 」
彼がバカにしたように笑う。
まるでその返事を待っていたかのように。
「 ハルくんはいいねぇ!美人な彼女がいてさ!」
「 なになに、怒ってんの?」
「 別に怒ってなんか… 」
「 まっ、そう焦んなって 」
そう言うと彼が片腕で、私の背中側からポンッと肩を抱いた。丁度エレベーターが7階に着いたところで扉が開き、肩を抱かれたまま二人揃って降りる。
その手の温もりが妙に熱く感じてしまい、ドキドキと心臓が揺れ始める。
「 焦ってなんかいない……
「 おせーよ!二人揃ってイチャついてんなよー!」
一室から圭と裕也が顔を出してこちらに向かって叫んでいた。
その時にはもう私の肩に彼の腕はなかった。
「 おー!悪い悪い!三神春香が重いからって俺に押し付けてきてたんだよコレ 」
「 何女々しいこと言ってんだこの小悪魔め!」
そう言って圭に頭をパシッと叩かれる。私をいじるのは、このメンバーじゃ日常茶飯事だ。
いつだって和やかで、スタジオに入っているときは個々が本当に真剣で、そんな風になれたこのメンバーがいつしか私にとって、とても重要な存在になっていた。
そして今から、初めての合宿がはじまる。
けれど、それ以上に……
先程まであった方の温もりが
少しだけ。
少しだけ、恋しい、と。
わがままを言えるなら
もっとあなたの近くにいたいと
あの短時間で、思ってしまっていた …ー