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あなたの背中
第4章 夏の終わりの
結局ハル君のTシャツを借りる事になり、脱衣所を借りて着替えを済ませた。ハル君は身体が大きいほうではないが、実際彼の洋服を着ると私には少し大きかった。
彼の香水の香りがそのTシャツからふんわりと漂い、彼が着ていたものと考えると、少し恥ずかしくなってしまった。
……… ーー
夕食を終えた私たちはいつものスタジオへと向かう。
私以外全員、バイク所有者で移動は基本バイク移動だった。しかし私は徒歩なので、ドラムで一番荷物の少ないハル君の後ろに乗せてもらうことになった。
いつもは彼の彼女のサヤさんが使っているヘルメットを借り、背中にキーボードの入ったバッグを背負い彼の後ろに跨る。
大型バイクに乗るのは初めてで、ヘルメットの付け方からハル君に教わり乗り方も彼に教わった。
「 俺 、服掴まれるの嫌いだからさ、こうしてて。」
ヘルメットをかぶったまま緩く後ろを向きながら彼は、私の両腕を掴むと自分の胴体に巻き付けるように誘導した。
… まるで 私が抱き付いているような体勢に
「 わかった?」
「 はっ……はい…っ 」
とても緊張した。
彼氏以外とこんなに密着したことがない私には、とても新鮮な出来事で。しかし、彼女さんに申し訳ない気がしてしまった。
「 彼女さん… 怒らない? 」
「 振り落とされたければ離して 」
「 …あっ、やだ。ごめんなさい 」
そう言って少し緩めた腕をふたたびギュッと握る。
ハル君の身体に自分の身体をしっかりと託すように。
「 ふっ… それでよろしい 」
そう呟いた彼はバイクを発進させる。
その勢いにグラッと身体が置いていかそうになってしまったが、しっかりとハル君に抱き着く。振り落とされないように。
少し走り安定したところで、彼は右手で私の右脚に触れた。
「 ……? 」
疑問に思いながらも何も言わず抱き着いたままでいると、今度はその右手で私の抱き付いている手をギュッと握った。
「 … な …… よ。」
ハル君は何かを呟く。けれどバイクのエンジン音で全く聞こえない。
「 …なーに!」
少し大きめの声を張り聞き返したが、彼からの返答はなかった。