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Leverage Effect〔レバレッジ イフェクト〕
第2章 罠 ─仕掛ける─
手数料収入に旨味が無くなった今、澁谷がこんな危ないものに手を染める理由はもっと別のところに有るはずだ。
例えば、それは仕手筋から得られる情報か。
そして、仕手筋が欲しがっているのは利口な証券マン。
解析(analysis)能力に優れ、無駄口を叩かない──そんな人物。
澁谷のアナリストとしての才能は、他でも高い評価を受けていた。
天性の嗅覚といったものだろうか。
仕手筋が澁谷に目を付けたのも、その”嗅覚”ゆえのことかもしれない。
澁谷はここぞと言う場面で的確な判断を下す能力に長けていた。それはなにかを素早く嗅ぎつける能力に似ている。
窮地に立って「何をするか」ではなく、「如何にするか」が求められているとき、緻密な計算と柔軟な発想によって作り上げられた澁谷の戦略は、非常に有効な結果をもたらした。
直接的には、澁谷を窓口にして株の売買で利益を獲得するが、彼らがホントに欲しいのは、澁谷自身のそういう頭脳だったのかもしれない。