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Leverage Effect〔レバレッジ イフェクト〕
第2章 罠 ─仕掛ける─

何れにしても、不正取引を関係者以外の者に知られたことは、澁谷にとって致命的なミスだった。

それをネタに揺すぶりを掛けたとき、澁谷はまず利益供与を申し出てきた。

お金の嫌いな人間はそうはいないだろうから、それは極めて自然な発想。

だが、端からそんなものに興味は無い。

金を払えば手に入れらるモノなどさほどの興味も覚えなかった。

このとき代価として要求したのは、澁谷自身。

普段は滅多に感情を表さない冷たく澄み切ったその瞳が、小さな驚きを浮かべるのを見て秘かにほくそ笑んだ。
 
──出世の階段を諦めることと、辱めをうけること、一体どちらを選ぶ?
 
西沢にはある種の確信があった。

この男なら目的と手段の連鎖を冷静に見極めて、恐らく自分の軆(からだ)を与えるだろう。

目的を遂げるためなら、自分の軆くらい思い切って捧げる類の人間。

そして、澁谷にはそうすることで、自分のポジションを守り、更なる出世の階段を上る必要が有った。澁谷をそれ程の野心に駆り立てるモノが何であるのかは、その時はわからなかったが…

澁谷は目的のために如何なる手段が効果的か知っていた。

その為の犠牲ならば幾らでも払う。そう言う人間だった。
 
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