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Leverage Effect〔レバレッジ イフェクト〕
第2章 罠 ─仕掛ける─
「4,890円で5万2千、残りは出来ず……か」
掲示板を見詰める澁谷の視線の先には、特別売り気配のまま引けた『日越工業』の株価。
4,310円のストップ安で商いを終了していた。
その日、相場は思ったより早く崩れ始めた。寄りつき後の一段高の後は、外国人投資家を中心に売り一色に転じる。
それに引きずられる形で、国内機関投資家も売りを入れ、一気に売り加速度を上昇させた。
結局、東京株式市場日経平均株価の終値は、前日比514円12銭安の今年一番の下げ幅となった。
澁谷の読みが格別甘いというわけでは無い。
ただ売りのタイミングが予想より早まったというだけ。
元々売りに転じる切っ掛けを内在した相場だったのだから、どのタイミングで下がり始めるかだけが問題だった。