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Leverage Effect〔レバレッジ イフェクト〕
第2章 罠 ─仕掛ける─
過剰流動性の恩恵を最も受けていた東京市場がここで急激に売りを強めたのは当然と言えば当然のこと。
ただ、体勢に関係ない株まで過剰な反応を示すことになったのは予想外だった。
相場を急激な売りに転じた直接の原因は、今朝早く発表があった米の金融引き締め予想時期の2ヶ月もの繰り上げであるが、それとて澁谷にしてみれば既に織り込み済みのこと。
にもかかわらず注文を捌けなかったのは、客の指値(さしね)が強気だったことと、例の株に思いも掛けず大量の売りが出たこと。
澁谷の売りを予想していたような展開。
朝の注文は前日からの客の指値であるし、”引け成行(なりゆき)”に変更したのは妥当な策であったが、大量の売りがすべての買呼値(かいよびね)を吸収し、残りは特別売り気配のまま値つかずで引けたため、”指値出来ずば引け成行注文”は成立しなかった。
結局、4万8千株の売り残しを出したことは客の機嫌を損ねる結果になった。