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ラブプレイ〜Hな二人の純愛ライフ〜
第30章 バイトの王子様
美容師っていったら師弟関係は外せない。やっぱり見て覚えろの世界だから新人のアシスタントの子達は鏡越しに技術者である先輩達の仕事を睨むように見つめている。

「読み終わったみたいだから花田さんの週刊誌変えて」

「あ、はい!」

聞こえてきた先輩とアシの会話にさすがとつい唸ってしまった。

目前の客を触りながらその二席向こう隣の客の様子にまで目を配る。

先輩の技術を盗むのに必死になる新人とはちがう余裕も見て取れた。

新人はこれを繰り返しながらサービス業という接客を覚えていくんだろう…。

俺はその新人の中でも一番下っ派だ。

客にもまだ近付けず、ただひたすら床に散れる髪をほうきで掃くのが今は大事な役目。

ただ、そのお陰か店内を自由に行き来して観察中でもある。

外の世界。未知に包まれていてやっぱ楽しい──

経験に敵う学びはやはり他にない。益々そう確信する。

裏の方では先輩に叱られたのか、新人が涙ぐみながら控え室から出てきていた。

「ねえ、あの子…誰かに似てない…」

週刊誌を新しく変えてもらった花田さんとやらが本を口に当て、こっそりアシに耳打ちしていた。

だて眼鏡を掛けて寡黙に床を掃く俺に鏡越しで視線が集中している。

来客した殆どの人には撮影が行われていることが通告されていた筈が、どうやら花田さんだけには通っていなかったらしい。

アシは手早く説明しているようでもあった。
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