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ラブプレイ〜Hな二人の純愛ライフ〜
第38章 二人の道標

長いこと繰り返したこの練習法で、白い紙にはまるで転写したように文字が浮かび、頁を開かなくても次の言葉がすらすら口にでるようになった。
小さな時はそんな俺を皆が誉めてくれたけど……
今は何をやっても当たり前だ!って逆に叱られる。。。
とくに髭のアイツに……。
つい思い出して、口を尖らせながら事務所のビルの一階に降りると舞花が後を追ってきた。
「聖夜──!」
振り返るとさっきの台本を胸に抱き締めている。
「あのっ…」
「なに?」
「ありがとうっ!これ大事にするっ……しますっ!」
「………」
社長にこの台本のことを詳しく聞いたのか、すごく嬉しそうな顔で言われて俺の方が逆に面食らった。。。
「あ……あ、いや。そんなんでそこまで喜ばれると……」
返って悪い気がする……。
使い古しだし、ある程度ボロくなったらまた毎回作り直す仮の台本だ。
「やっぱ待って。それ作り直して新しいやつあげる」
「いやっ…これがいいっ!」
舞花は手を伸ばした俺を振り切るようにして胸に抱き締めた台本を庇った。
「これがあったら聖夜みたいになれそうだからっ…」
「………」
そう言って目を輝かせる舞花からは一生懸命な想いが感じられた──。
「……いいよ…わかった」
思わず笑みが零れた。
一生懸命な奴は嫌いじゃない。
こうやって真っ直ぐに感情を訴えてくる瞳は俺の胸にも響く。
「それは持ってていいから。それとは別に長持ちするようにちゃんと作って貰ったのをプレゼントしてやるから……」
「……え…」
舞花は俺の言葉に目を見開いた。
やっと仕事のやりがいに気付いた後輩に事務所の先輩として初めての贈り物を──
今だ驚いた表情のままの舞花の頭を撫でると俺は無言で背を向ける。
その後ろからはやっと我に返った舞花のいってらっしゃいの言葉が掛けられていた──。

