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ラブプレイ〜Hな二人の純愛ライフ〜
第38章 二人の道標

「F局までお願いします──」
呼んでいたタクシーに乗り込み行き先を告げる。
今日は楠木タクシーの送迎はない。楠木さんは掛け持ちで他のタレントと現場入りしている。
丁度お昼の移動時間に重なったせいか、道路は少し混んできていた。
「……あー、この分じゃまた次の信号に引っ掛かっちゃうなあ…」
馴染みの運転手さんがそう小さく呟いた。
「ちょっと、別の道行っていいですか?」
「別の道?」
「抜け道があるからそこを行った方が今日は早く着くかも…」
「お任せします」
答えた俺にミラー越しでニッと笑い、運転手のおじさんはハンドルをきると大通りからビル街の小路に入っていく。
少し進むと見慣れた風景が車窓の外に流れていた。
「あれ──…ここ…」
小さく口にして、後部座席にもたれていた背を起こす。
「藤沢さんもよく通りますかこの道」
話し掛けてくる運転手に応えずつい窓の外に目を凝らす。
「………」
少し前まで何度か見た景色──
ロッジ調の喫茶店。
大きな窓の内側では、微かに混んでいる店内の様子が伺える。

