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ラブプレイ〜Hな二人の純愛ライフ〜
第38章 二人の道標

「…ここの珈琲おすすめですよ。藤沢さん、来たことありますか?」

「……いや」

明るく話す運転手の言葉に、俺は自然とそう口にしていた……。



直ぐに走り去った景色を背に、俺はまた後部座席に身を沈めると何故か頭が空っぽで深いだけのため息が漏れていた。

今見た景色に何の感情も沸いてこない……

灰色だ……

目の前にある全てが薄いモノクロに染まっている

ついこの間まで、俺の心を埋めていたひとがそこには見あたらない──


ねえ晶さん……

俺の中に もう晶さんの姿が全く浮かび上がらないよ……


背もたれに頭を預け、小さなため息だけが俺の口から零れる──

ゆっくり瞼を閉じると運転手のおじさんは気を利かせたのかその後静かにハンドルを動かし続ける。


何だかずっと夢を見ていた感じだ──

そうだ

この感覚は夢から目覚めた時と似ている。

ひどく朦朧として、すごく色んな事が起きて騒々しかった筈なのに──

目が醒めたら何一つも記憶に残っていない……。

まるで、憶えて置くことを脳が全て拒否したような──

起きたこと全てがどうでもよかった事のように……


「……ふっ…」

目を閉じながら、そんな笑いが口から漏れる。

「どうしました?」

「いや、なんでもないよ。ちょっと思い出し笑いしただけ……」

そう言って目を開けると俺は局に到着した狭い車内で軽く伸びをする。そしてタクシーを後にした──。

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