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ラブプレイ〜Hな二人の純愛ライフ〜
第38章 二人の道標

二人しか居ない事務所はまるで俺のマンションの部屋みたいにとても静かだ。

話す人も居ない

TVの音もしない

ただ帰って眠るだけの場所に舞い戻ったあの部屋は──

また殺風景な空気に包まれていた。

「聖夜居るか?」

予定より早く事務所に着いた楠木さんがドアを開くと俺は直ぐにソファから起きて腰を上げた。

局に着いたら支度を済ませ、気合いを入れてスタジオでの撮影に挑む。

疲れていようと役に入り込めば直ぐに疲労感なんて飛んでいく。

「シーン8いきます」

スタッフの声が響くと緊迫した場面の撮りで、気が引き締まった。

演じることはやっぱり好きだ。
OKの言葉を耳にした時の達成感は一瞬であれどスカッとした気持ちにさせてくれる。

「──……聖夜…」

「……?」

撮影を終えた帰りの車の中で、運転しながら楠木さんがバックミラーを覗いていた。

「役作りも程々にしろよ…」

「なんで?」

「やつれ過ぎだ」

「……そう…かな」

俺はミラーに自分の顔を映して眺めた。
今のドラマの役は殺人の疑いを掛けられて行方をくらませた逃亡者だ。

主役ではないけれど、物語にとっても重要な役所。キーマンでもある。

「……そんなに節制してるつもりは……」

ないはずだけど……

少し骨張る自分の頬に手を当てた……。

体力も必要だからとしっかり食べているつもりだ。

野菜だって、栄養ドリンクだって考えてちゃんと口にはしている。

ただ……

胃に入れたその半分は口から出ていっていた──
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