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ラブプレイ〜Hな二人の純愛ライフ〜
第38章 二人の道標

“倒れた”

「え……なんで…」

健兄の言葉を頭で整理して呟いた口元を手で覆う。


倒れた…って…どうして?……


手には一口かじっただけのサンドウィッチを持ったまま、あの日、背を向けた夏希ちゃんを思い出す。

「帰らなきゃ……」

独り言が勝手に漏れ、あたしは腰を上げていた。

スクール側に事情を説明して、部屋に戻り帰国の支度に直ぐ取り掛かる。

荷物をトランクに詰め込みながら、あたしは夏希ちゃんと最後に言葉を交わしたあの日をまた思い出していた。



“晶さんがわかったのは俺の何?──”

“連れて帰ればいいなんて余裕ぶっこくわりに、実は鍵忘れるくらいテンパってたって……そこわかってた!?…っ…──”


「──……」

今にも泣き出しそうにそう叫んだ夏希ちゃんの苦しそうな表情──。



“いいよ、もう……

もう疲れた

なだめて機嫌とって必死に尽くして……っ…それでも結局こうなるなら…っ…もういい……”


そう言って諦めたように軽く笑った夏希ちゃんは最後にこう言った──。


“晶さんを好きでいると俺…壊れる……”



あの時、夏希ちゃんの吐き出した言葉が嫌でも蘇る……

そしてあたしは唇を噛んだ。

「……っ…なに言ってんだか…っ…全然平気じゃないじゃん…っ……」

あたしが理由で倒れたなら離れていった夏希ちゃんのせいじゃん!

自分から離れて行ったくせにっ…

離れたら死ぬって自分で言ってたくせにっ…


「……っ…」

トランクに衣類を押し込んだ手が震える。


帰ろう──

帰って顔を見てちゃんと話をして……

「……ふ…っ…」

色んな後悔と夏希ちゃんが倒れた現実が一気に肩にのし掛かる。

勝手に溢れ出した涙を手の甲で拭きながら、あたしは黙々と身の回りを片付けていた。
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