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オカシ屋サン
第1章 * ご注文ありがとうございます *
僕が手にしたのは、棚のコーナーに無造作に重ねられている桐箱。
ニ十センチ四方のそれを手にショーケースのほうへ戻ると…やはり、お客様の目付きが変わりました。
蓋をとると中には何も入っていない。
…さて、これがお望みで間違いないですか?
僕が問うとお客様は大きく唾を飲んで頷いた。
そして歩みより、僕から桐箱を受け取る。
「…いくらだ?」
値段の交渉が始まり、僕はすかさず三十万と答えた。もといこれは交渉ではない。僕は一度提示した値段は一円たりとも変えたことがないですから。
不満なら売らない。それだけのことです。
「…っ…わ、わかった。買おう」
お客様は怖じ気づいたものの予想はしていたようで、値段をのむまでにそう時間はかからなかった。