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やめられない牛丼屋
第2章 エリアマネージャーの視察
客は誰もおらず、厨房の奥に佇む巨大冷蔵庫のモーター音が鳴り響いている。僕は軽く唾を飲み込みながら、冷凍庫を見た。
(賞味期限を過ぎた牛肉は冷凍庫の奥にしまったので、見つかることはないだろう。)
すべての準備はOKだと深呼吸していると、入店音が鳴った。
ヒールの高い音が大きくなる。僕はカウンターのほうを見ると、タイトな黒いビジネススーツに、長い黒髪を後ろにまとめた美女がこちらに向かって来ていた。黒縁メガネをかけており、背筋がピンと伸びている。外が寒かったせいか、頰がほんのり桃色に染まっていた。エリアマネージャーという役職から30代は確実だが、20代後半と言われても誰も疑わないだろう。
「北区エリアマネージャーの吉川です。」
と言いながら、カウンターの敷居を開けて厨房に入って来た。
「あ、よろしくお願いします。アルバイトの佐々木です。」
「ぱっと見は綺麗にしているようね」
と吉川さんは厨房の隅々まで見渡しながら言った。吉川さんはカバンからバインダーを取り出し、それに視察のチェックシートをセットした。シートにはもう日付が手書きで記入されていた。胸ポケットにしまっていたボールペンを手に取ると、綺麗な文字で現場担当者の名前欄に僕の名前を書いていく。
(賞味期限を過ぎた牛肉は冷凍庫の奥にしまったので、見つかることはないだろう。)
すべての準備はOKだと深呼吸していると、入店音が鳴った。
ヒールの高い音が大きくなる。僕はカウンターのほうを見ると、タイトな黒いビジネススーツに、長い黒髪を後ろにまとめた美女がこちらに向かって来ていた。黒縁メガネをかけており、背筋がピンと伸びている。外が寒かったせいか、頰がほんのり桃色に染まっていた。エリアマネージャーという役職から30代は確実だが、20代後半と言われても誰も疑わないだろう。
「北区エリアマネージャーの吉川です。」
と言いながら、カウンターの敷居を開けて厨房に入って来た。
「あ、よろしくお願いします。アルバイトの佐々木です。」
「ぱっと見は綺麗にしているようね」
と吉川さんは厨房の隅々まで見渡しながら言った。吉川さんはカバンからバインダーを取り出し、それに視察のチェックシートをセットした。シートにはもう日付が手書きで記入されていた。胸ポケットにしまっていたボールペンを手に取ると、綺麗な文字で現場担当者の名前欄に僕の名前を書いていく。