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第19章 月に叢雲花に風

直哉ｓａｉｄ


・・・なんだ？
この茶番
俺は笑えねぇけど、伊織はめっちゃ少女漫画を見た瞳になっちゃってるんですけど。

「良かったねぇ！！宝！！おめでとう多田君！！」

「「ありがとう！！」」

伊織の心からの祝福に二人はこれでもかって位、イチャイチャして応えてる

「・・・とにかく座れば？」

俺は常識人なので周りの冷やかしが辛くて、新米カップルと彼女の茶番劇を終わらせようと声をかけた
ってか、周りも暇人かよ？
コホンと、咳払いした俺がなんか間違ってんのかな？
って気がするんだけど・・・

・・・ってかさ？
こんなに公衆の面前で、イチャイチャ出来る新米のお前ら・・・
クソッ・・・
羨ましいなんて思わねぇぞ！
思いたくない！！
思ってやるか！！！

「直哉・・・その・・・勝手に帰ってごめんな？」

「・・・」

「ごめんって！！」

多田が俺の無愛想に気が付いたのか、ようやく謝ってくる

「・・・いいけど」

俺の言葉と心は裏腹だった

けど、それは上辺だけだ
俺だって・・・伊織と二人でデートしたかったし？
高い金払った代金は頂いたよ。

ただ、目の前でいちゃつくお前らが・・・そう・・・
なんとなく・・・嫌・・・間違いなく！！不快になってしまったんだよ！！

何故かって？
教えてやろうか？
教えていらない？
いいや・・・
教えてやるよ。





「どこに行ったのかなぁ？宝と多田君」

「さぁ？どっかで会えるんじゃね？」

「直哉・・・冷たいよね？」

どっちがだよ

「そう？」

伊織は従妹ちゃんを心配する余り俺への態度が雑になってる
男同士の内緒の計画
・・・ってかさ？
いい加減俺を見てくれても良く無くね？
伊織の鈍感さに腹が立つレベルだわ

・・・腹立つけど・・・可愛いから・・・許す
・・・許すからさ？
・・・俺だけを見てよ？

伊織が可愛いのは一目見た時から知ってるし？
伊織が優しいのは昔から知ってるし？

俺が伊織だけを好きなのは知らない？
俺が伊織だけを好きなのを知ってもらいたいし？

・・・どうしたらわかってもらえんのかな？
・・・どうしたら・・・男心と女心をわかってもらえんのかな？

・・・黒い俺の内心で・・・教えてあげたくなるんだけどさぁ？
伊織は可愛いからさ？
今は・・・今だけはやめてあげる・・・

なんて・・・言い訳して・・・卑怯な俺だよな