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シミュレーション仮説
第3章 夫への愛を失くした女
「あ…?」

 どのくらいそうしていたか。恵子が驚いたように小さな声を上げる。

 逞しかった男性器はいまだに恵子の献身には応えてくれない。
 しかし篤志の舌が恵子の動きに応えるようにほんの少しだけ動いた。

「ん…、そこ、気持ちいい…」

 恵子は心底倖せそうに言う。声に甘い響きが混じる。

 篤志はその声にさらに舌を動かす。

「あ…んっ、もっと…! もっと舐め…あふ、んっ!」

 いつしか篤志は積極的に恵子の分け目にむしゃぶりついていた。

 妻の献身を感じた。思えば今夜だけではない。あの日以降ずっと。

 いや、もしかしたらその前から。

 思い返せば自分は自分勝手なセックスが多かったのではないか。自分だけが満足していたのではないか。
 快感は与えることが出来たかもしれないが本当の満足を与えることは出来ていなかったのではないのか。

 それでも恵子は自分を支えてくれ尽くしてくれた。今もたくさんの愛を感じることが出来る。

 少しでも応えたかった。少しでも妻を悦ばせたかった。

 お互いを舐め合う音に、恵子の喘ぎが徐々に大きく交じっていく。
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