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第10章 欲情する尾行

その男は、木戸達の会社のシステムを請け負っている会社のエンジニアをしている新井祐二だ。

比較的、静かにやってきた新井は、まず目が合った木戸と飯島亜紀子に「こんばんは。お世話になっています」と軽く頭を下げた後で、土井が振り返る前に「よっ」と慣れなれしい態度で肩を叩いた。

それに「あらぁ！」と振り向いた顔を輝かせる土井に、それは誰がどう見てもこの二人は付き合っていると思わせるものだった。

それで木戸はチラッと岡本のことを見ると、先程までの上機嫌な酔い顔は消えてサッと血の気の引いた真顔になっていても、それでも装いの笑顔を懸命に浮かべていてその心情に同情すると、自分も飯島亜紀子との距離を少し空けた。

「来てたの？」

会社では聞かれない、年上的な口調で土井が言った。