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わざとの嫉妬、それからの・・・
第10章 欲情する尾行
「私はハイボール」

「そう。じゃあ、ハイボール一つと僕はバーボンのロックで」

「はい」

オーダーした物が出てくるのを待つ間、木戸と飯島亜紀子はさして言葉を交わさなかった。

それは飲み始めてからも続き、男は一杯飲んだらサッサと出ようと思っていたが、一つだけ聞きたいことがあるからそれを切り出すタイミングを伺っていた。

それで、バーボンの液がグラスの氷を僅かに浸すだけの量になった時に、相変わらず座って映画を見ているマスターに「このお店は長いんですか」と聞いてみた。

こちらに移ってきた目線は、何も疑わずに「もう二十年ぐらいですかね」と答えてきた。

「ふ~ん、そうなんですか。あと、ココって上にも何かお店があるんですか」
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