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君を孕ませたい
第1章 被っていた仮面
「・・今回は大変だったね。少しずつ気持ちの整理をしていけば良いよ」



「・・っ、ありがとうございます・・」

途端に目に涙をにじませながら俯く。



生まれて間もない頃に両親を亡くした彼女はずっと祖父母に育てられてきた。8年程前に祖母が亡くなり、その後は祖父と2人で暮らしていたが、その祖父も2ヶ月程前に亡くなったと聞いている。


彼女の祖父と俺の祖父は同郷で幼少の頃からの友人関係だ。会社の代表を務める祖父と、長年大学の教授をしていた彼女の祖父は時間が合わず頻繁に会う事はなかったようだが、それでも年に数度、長い休みの時なんかは俺や両親も連れて彼女たちの住んでいた祖父の生まれ故郷へと遊びに行ったものだ。

他に親族はなく、高校に進学したばかりで途方に暮れていた彼女に家に来るように説得したのは祖父なりの優しさなのであろう。



「で・・さっきは何を話していたの?」

祖父の方を向き尋ねる。



「ああ、いや、実咲ちゃんがただお世話になるのは心苦しいから働かせてくれと言ってきたんだ」



「そうなんだ」



「だってっ私・・本当だったらバイトしながらなんとか生活していこうって思ってて・・それなのにこんな立派なお宅に住まわせてもらえて、何もしなくて良いだなんて・・何かしないと申し訳なくて・・」



「だからさっきも言ったように今は勉強と部活を頑張りなさい」



「でもっ・・」



「じゃあさ、俺の身の周りの世話をしてよ」

思いがけぬ提案に少し驚いた表情を浮かべ2人がこちらに顔を向ける。



「世話って言っても大した事はないんだけど。昼間は仕事で家にいない事も多いし、食事は外食が多い。だから実咲ちゃんは俺の家の簡単な掃除と・・そうだな、たまにお茶を淹れてくれる程度で良いんだけど、どうかな?」



「まぁその程度なら学校にも支障ないだろうし良いんじゃないか。ね、実咲ちゃんどうかな?」

祖父も同意する。



「・・・っ、はいっ、ありがとうございます!」

ぺこりと嬉しそうに頭を下げる。



「じゃあ・・そうだな。俺の住む家の2階の部屋が空いてるからそこに住んでくれる?その方が色々頼みやすいし。鍵も掛けられるから心配しないで。いいだろ?じいちゃん」






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