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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第10章 子育てはエゴイズム
ぼーっとグラスに入っているシャンパンを見つめ続けて、かれこれ15分は経っただろう。どたばたと煩いほどに耳に入る沢山の人間が階段を駆け上がってくる音でふと我に返った。
振り向くとそこには、真っ黒のスーツを着た『いかにも』な人達。
「おい、全室徹底的に調べろ!」
警察と極道モノは雰囲気が似ているとは小説やドラマでもよく言われる。
それはなぜなんだろう、本来なら逆の立場に居るはずなのに──。
そんな馬鹿げた疑問が私の頭の中に浮かんだとき、沢山の男達の群れが散り真ん中から一人の紳士そうな老人とその横で突っ立っている青年が目に入る。
そしてその瞬間……先ほどまでボーっとしていた私が大きな声を上げたのだった。
「イ……ルト!?」
「てめえ!」
紳士を跳ね飛ばす様な素振りをした彼は、私と目が合うなりユンサとは打って変わった品の無い歩き方で、一直線に距離を縮めてきた。
「こんなところで何してんだ!ああ!?」
「おめえ、此処が……このVERMINがどんなクラブか知った上で、そんな態度でシャンパンなんて飲んでるっつーのか!?」
「私はっ、ただっ」
「……ただ、何だよ。理由が有るんだよなあ、ヒョンに飽きて男探しか?それとも俺達のマネージメントに疲れてコカインでも貰いに来たのか」
「なっ──あんたこそ!」
「あたしがあれだけ、こういうところではしばらく遊ぶなって言ったのに何で悠々と此処に居んのよ!?」
「俺は良いんだよ」
「何が良いの!?」
色々なことが一気に起こりすぎている。
何に怒りを覚えているのかわからないけど、でも確かにイライラとしていて……それを目の前のイルトにぶつけているのは確かだ。私が必死に売り出そうとしている『FBK』のリーダーに。
「俺は……」
「俺は何よ、あんたこそ俺は違うとか女を抱きたかったとか言いたい「ああ、うっせえな、黙れやコラッ!」
「俺はな」
「ここ仕切ってる神宮会の会長の一人息子なんだよ!!」