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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第12章 隠蔽工作は愛の味
今日はなんでこんなに道が混んでいるんだろう、と思った矢先に日付を思い出す。ああ、給料日か、なんて思った後で、私は有り難い事にこんな日を忘れられる生活をさせて貰ってたんだ、と、何とも言えない気持ちになった。
中々進まない運転に苛々しながら、バッグを中をふと見た時──タイミング良くスマホの画面に『パン会長』という文字が写る。
会長とは、テヒョンとの付き合いが公になった時点で連絡先を交換したけど、こうやって電話が掛かって来るのは始めてだ。
勿論、私から掛けた事もない。
昨日の事だろうか……。という不安を胸に置きながら、震え一つない指でスマホをタップした。
「ヨボセヨ?」
「……ヨボセヨ。」
「どうした、テヒョンに聞いた話だと体には異常が無いみたいだけど。元気のない声だな」
「────。」
「まあ、そうだよな。色々あったと聞いてるよ、さすがのリサさんでも声色が普段と違うのは仕方ないか」
「会長こそどうしたんですか。いつも伝えたい事はテヒョンを通して仰ってくれるのに」
「……いやっ、今回はBNの会長から社員に伝えたい事だからね、そこにテヒョンを通すのは違うと思って」
「──クビ、ですか」
「違うよ。そんな事よりももっと難しいこじれた事だ」
頭に浮かぶのは週刊誌やらSNSの固有名詞。
まさか──とは思うけど、そのまさかだったらどうしよう。さすがの私のアボジもFBKのマネージャーを降りろ、と言うに違いない。
きっとアボジの場合は全て知っているけど──でも、まだ世間一般にディティール部分が知らされていないから目を瞑ってくれるんだと思う。
ああ、ここで出てくるんだ。
私の『帝国夫人』という柵が。
「イルトが、引退するらしい」