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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第12章 隠蔽工作は愛の味
「へっ?」
耳に聞こえたのは『引退』という想像一つしていなかった文字だった。
「今朝、私に電話が有ったんだ。」
「親父さんの"家業"を継ぐんだと言っていた。勿論止めたんだけどね、聞く耳なんて一切持たずに事務所の口座までレッスン費用返還の名目として3000万円振り込んできた」
「……連絡は取れてますか?」
「いやっ、それがジェジュン達の方へは引退の連絡が来たけど、それ以降カカオトークも何も既読が付かず、電話も出ないらしい。家にも居ないみたいなんだ」
「ちょっ、運転手さん!行先変更で!」
「──ジェジュンの家……『新家』の総本家まで向かって!大至急!」
「……正しい判断だね。リサさんの事だ、神宮会の総本家を目指して出ていたんだろう。あながちテヒョンと喧嘩でもして」
「っ、それはどうでも良いんです」
「今はっ──テヒョンはどうでも良いんです」
「………。」
「会長、私ね思った事が有りました」
ラスト一本の煙草に火を付けてから窓を少しだけ開けた。
きっとパン会長もライターの音で私がタバコを吸いながら話し出そうとしてる事に気付いてる筈だけど、何も言わずに黙って言葉を紡ぐのを待っている。
「彼達と一緒に一か月過ごして、韓国芸能界っていう保守的な場所で戦っていく戦友としての有り方を覚えた時に──思ったんです」
「どうして人間は『育ち』や『生まれ』を気にして、そこにランクを付けて、その先の人生も決まるんだ。なんて顔して平然と生きてるんだろうって」