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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第12章 隠蔽工作は愛の味
「いやっ……、上手に言えないけど色々と無理させ過ぎたんだなって。付き合い出した当初と同じだよ」

「私はしんどくないわよ、FBKのマネージャーもアンタの奥さんしてることも。」


「……はっ、相変わらずだよな。」

「どういう意味よ。」


「さすが俺の選んだ女だけあるなって、俺が繊細なのをお前がカバーしてくれてんだよ。」

「──俺が思うより、お前は強い女なんだなって、いつもこういう場面になると思い知らされる。」


「俺はそういう所では、リサには今後も勝てないと思う。」


「……。」


「だけど人間、無理は禁物だ。イルトの事もハンソン兄弟の事も、全部落ち着いたら二人で旅行でも行こう。」

「俺もその時ばかりは携帯置いてって帝国からもBNからも離れるよ。一週間くらい宮古島にでも行けたらいいな」


「ははっ、宮古島?なんで?」


「いや?ただ、宮古島なら俺の事を知ってる人も韓国の離れ島や沖縄とかよりも少なそうだよ。何よりゆっくり出来るってもっぱら評判なんだ」

「へえ。」


「で、残り三泊ってなったらテテとアイと……オンマ、アボジ、クリスタルを呼んでやることにしよう。」

「それまでは、俺とリサの二人だけの旅行だ。」


きっと、その瞬間を想像しているのだろう。悪ガキの様に口角を片方だけ上げながら、そう言うテヒョンは、やっぱり不器用。

でも不器用ながらに私のことを思ってくれている。

だからこその旅行の誘いで、さっきの言葉なんだろう。


「……ねえ、テヒョン」

「ん?」



「──サランヘヨ。」


久しぶりに言った、この言葉。

満足そうな表情をした彼の髪をグシャっと撫でると、私は恥ずかしさを隠す為に少しだけ彼の先を歩いた。


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