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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第16章 衝撃のヨクサムドン
どこか悲しさが漂うだだっ広いリビング、家具なんか両手で収まるほどしかない。
多分、この広さを見る限り寝室や客間は別にあるのかもしれないが、それでもどこか孤独な雰囲気がある。
私に子供がいなくても、ここまで殺風景にはならないだろう。
目隠しして連れてこられたこの部屋はカーテンの隙間からチラリと見える夜景をみた限り、どこかのタワーマンションだと予想する。
それも多分最上階で……ここら辺のマンションの中で一番高い。だからこそ、見栄張りのユンサが選ぶのだ。
目つきの悪いボディーガードの男、三人に見守られながらテレビを付けると丁度──あそこで茫然とした顔で私を見送った五人が歌っているシーンが目に入った。
セカンドラブ、だ。
ああ、彼達をここまで上り詰めさせてくれた『DEEP NIGHT』は無事に披露できたんだろうな、と思うと……涙が出そうになるんだから、私も歳を取った。
「そして又、あなたに弄ばれるの?この身も心も」
「あなたになんか惚れないはずだった、責任の取れない愛なら要らないとさえ言いたい」
ジュンとミンホの声が上手ミックスされながらメロディーは加速していき、ロックらしいテンポでイルトのザビに移る。
リーダーの顔は、どこか寂しそうにも見えた。
「帰るべき場所に帰れ」
「……っ、え?」
小さく目の前の大きな液晶に呟いたのは私。
だって入りの歌詞が違うんだもん、本当ならばあそこは『あなたなんて大嫌い』となるはずだ。
帰るべき場所に帰れ、なんて歌詞は無い。
「悲しいし辛いし認めたくない」
「だけど、これ以上私をしらけさせないで」
「そこに帰って、また笑ってよ。何ともない様な笑顔で私をまた誘惑してよ」
全然違う歌詞なのに──
イルトが、女心として歌いあげ、リズムにもしっかりと乗せているから違和感は何もない。
ただ俯いて目を瞑り歌う彼とは対照的に──
少しだけ画面の端に顔を見せたジェジュンは一瞬驚いた顔をしたものの、きっと何処かで私が番組を観ていると思ったのだろう。
その後すぐに優しい……すべてを受け入れる様な笑顔をしてくれた。