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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第1章 自分勝手な旦那さん
頭を押さえながら寝室に戻った私、ソン・リサ。今日まで色々な体験を子育てを通じてさせて貰ったけど──。
今日ばかりはテヒョンを送ってられないし、アボジとバカみたいな話をする程の体力がない。
「つまり……こうよね。」
「アボジは、帝国グループの会長を三ヶ月前に辞任したけどまだ一線からは退くつもりがない。──というか、まだ退けない。でも自分の人生も送りたい。」
「だからこそ、愛子さんの居た大阪にわざわざ帝国グループ日本支社を東京から移動させて」
「そこで日本支社を動かすことになる、と。」
「アボジは狭い家に慣れてないから、わざわざ会社近くに新しい豪邸を買った。そこに私の母親も妹も引っ越す準備を進めてる……」
「もっと言うと」
「帝国グループ初の『公立の小学校』への入学手続きも平行して進めてる……。」
アボジが表面上の一線からの退任後の人生を、大阪に尽くすのは分かる。愛した女性『愛子さん』の地元だからね。
そして、テテとアイに日本人的な考え方や日本の文化等を知って欲しいという気持ちも分かる。
でもアボジだけじゃ頼りない。
だから家政婦や教育係といったお金持ち特有の人をつれていくんじゃなく、私の母──そう、テテとアイから見たら唯一の祖母。
そしてクリスタルと韓国特有の英ニックネームをテヒョンから付けられた私の妹、その二人に頼るのも分かる。
──でもひとつわからないのが、どうして私を日本に行かせないのか、それだ。
『俺が一人で生活できねえこと知ってんじゃねえのか?──はあ。本当にお前は冷たい女だよな。』
『俺がコンビニ飯で太っても肌荒れても、それで帝国のグループ利益が下がっても、サファイアの人気が下がっても良いってか。』
『やっぱりお前は母親になって俺のことを好きっていう気持ちが無くなったんだな』
結婚前にも散々聞かされたこのワード。──ガキか、と朝から突っ込みたくなった。
私は彼の妻だ。でもその前にお腹を痛めて産んだ双子の母でもある。
子と母が一緒に暮らせない──しかも、その決定をしたのが自分の旦那なんて。
本当に信じられない気持ちだ。