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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第4章 想像以上の実力

「なっ、ヌナがグループの為に仕事してるの分かってたから言ったんだけど」

「でも面白そうなターゲット見つけただの、ヒョンに感謝だの、散々道徳心の無い発言してたのはアンタでしょ。誰がそれ聞いた上で易々と二人きりになると思ってんの」


「──っ、可愛くねえヤツだな」

「ああ?誰に口利いてんの」

ほら、私にも移ってるテヒョンの口癖。


「可愛いとか可愛くないとかアンタらに関係あんの?」

「……。」


「無いでしょ、分かったならさっさと皆が待ってる宿舎に帰りなさ「ああ、もういい。」

「もういいのはコッチだっての」

「ちょっとハジンさん、ドライブデート久しぶりに行かねえっすか?」

イルトが声をかけたのは私の三つ前に座っている女の子だった。誰の担当をしてるんだろう、話した事もないから何も分からない。

「えっと……。」

でも一つだけ、確信を持てる事がある。


それは『イルトが手を出した経験が有る』ってことだ。彼女の赤く染まっている頬が、それをしっかりと物語っている。どれだけイルトがクソでも本気で惚れてしまってる事さえ──。


「このヌナには後部座席乗ってもらうんで、ハジンさんは俺の隣で。帰りは二人きりなんで前行ったフレンチでも行きましょうよ」

「ちょっ、イルト!」

「……三人ならゲーム開始出来ねえだろ?しかも俺もハジンさんの前でヌナ口説くほど、人の気持ちが分からねえヤツじゃねえし。」

私にしか聞こえない声でそう言う彼に『よく言うよ』と言いだしたかった。

──でも、その前に私のバッグに乱暴にタバコと携帯を詰め込んで、すたすたと事務所を出ていく彼の後ろを追いかける様にして小走りするハジンと呼ばれる可愛らしい女性。

「バッグ持たれたらついて行くしか無いじゃん」

私の日本語での独り言は、幸い誰にも聞かれていないだろう。


ああ、もうペースが崩されるのは勘弁だ。





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