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さらに近くてもっと甘い
第1章 過保護な旦那様




何度ノックしても返事のない社長室の扉を開けると、


愛おしそうに左手の薬指を眺める社長がいた。




「さすがですね…」



要の予言通りのその光景に、酒田は楽しそうに微笑むと、さきほどまで蕩けていた光瑠の表情がみるみると強張っていった。




「約束の時間に遅れるとは一体何事だ!

社長であるこの俺を待たせるなど──」



「申し訳ありません。酒田が歩くのが遅いもので」


「すっ…すみません…」



というかまだ2分しか遅れていないのに…


もっと言えば、これまで社長に何時間も待たされた経験だって、何ならすっぽかされた経験だってあるのに…



そんな酒田の心の声は一生世に出ることはない。




「ったく、遅れた分際で、謝罪もない上に、ごちゃごちゃと訳の分からん言葉を並べやがって!」



イライラを爆発させる光瑠を見て怯える酒田とは裏腹、要は余裕の表情を見せる。








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