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さらに近くてもっと甘い
第12章 メガネデート



ふぅ…ふぅ…と何度も深く息を吐く。


体調が悪いとも見える幸太郎のその様子に街行く人は、ハラハラとしながら見守っている。


ガラスに映る自分の姿を何度も確認しては、直りきらなかった寝癖を抑え込む。


今日は会社の上司とのデート…


いや、正確に言えばメガネを買うのに付き合ってもらうだけ…なのだが、幸太郎の胸中は完全にデートになっている。チラと見た腕時計はもうすぐ約束の時間を示そうとしている。



あああぁぁっ……ど、どうしようっ……い、いや、どうすることもないけどっ…



まだ会ってもないというのに顔が紅くなってしまって、それを止めることが出来ない。



再び自身を落ち着けようとふぅふぅと息を吐いていると、トントンと肩を叩かれて、幸太郎の背筋がピンと伸びた。




「あ……やっぱり幸太郎くんだ!」


「─────……っ…」



微笑みの天使。


上京してきた幸太郎にとって、都会での唯一のオアシス…



「おはっ…おはよごじゃっ…」



「おはよう…!」



普段の会社の制服とは違う。


上着からのぞく、淡い紫のスカート。


フワフワと肩の上で揺れる髪。



「──────…」



……かわいいっ……



いつもとは違う加奈子の女らしいその姿に、幸太郎はさらに顔を紅くしていた。




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