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さらに近くてもっと甘い
第13章 入れ違いに入れ違い
有川商事、社長室。
部屋の主は、積み上げられた書類の最後を読み終えると、溜め息を吐いてそれを机の上に置いた。
どうも気分が晴れない。
光瑠は天井に向かって左手を掲げると、薬指に光る指輪を見つめた。
「…………………」
窓からの光るを反射させて、きらりとシルバーが輝く。
それは永遠の愛を誓った証拠。それがあるから、昨日のように言い争ったあとでも、前ほど心がかき乱されるような事はなくなった。
のだが……
「はぁ……」
再び深く溜め息を吐いて、光瑠は左腕を脱力させた。
結局、昨日は要と夜まで飲み明かしてしまった。
自分が眠ろうとした時には真希はもう眠っていて、朝も真希が起きる前に会社に来てしまったので謝れていない。
もっとも、謝ることに対してまだ釈然としていないという事も、謝罪が遅れてしまっている理由だ。
何の気なしに立ち上がった光瑠は窓の外を見つめた。
奥に佇む屋敷。時計はもうすぐ正午を示そうとしている。
真希は……何をしているだろうか。自分と同じように、昨日の事を考えているだろうか……