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さらに近くてもっと甘い
第15章 副社長様のクッキーと甘いお仕置き
ティーカップを、両手で掴む。
温かさはとっくにない。
そのまま加奈子は腕時計をそっと見つめた。
もう約束の時間から1時間……
何かあったのかな……
同じ会社だからこそ、要の忙しさは分かっている。
電話も試みたものの、出る気配もなかったため、加奈子は一人で夜のティータイムを過ごしている、というわけだ。
……忘れられてたりして。
「それはないかぁ」
底無しに優しくて完璧な要が忘れるなんてこと、あり得ないことは加奈子が1番分かっている。
要の要望されて焼いてきたクッキー。
湿気ちゃう、かな。
そんなことを思いながら加奈子はそっとクッキーのタッパーを閉じようとした。
その時、
「……田部先輩………?」
弱々しい声にハッとして加奈子は声のする方に向き直った。
ボサボサ頭のメガネくん。
「あー幸太郎くん」
「こんな夜遅くに何されているんですか?」
幸太郎は、残業帰り、
甘い香りと紅茶の香りに誘われて足を進めていたら思わず想い人を見つけて胸を弾ませていた。
「ちょっと、お茶をね……」
「一人で……?」
と言い掛けて、もう一つティーカップが用意されていることに気付いた。