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さらに近くてもっと甘い
第16章 アイドルの交代
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寝支度を整え終わった光瑠は、無意識にふぅ……と息を吐く。
力を抜けば今すぐに眠れそうなほどの疲労感を感じていたその時。
背後から扉が開く音がして、振り返るとそこにはしっとりと目を潤ませた妻が立っていた。
「……? どうし────」
「──────光瑠さんっ…」
「っ…なっ…おい……」
駆け寄って強く抱きついてきた真希に光瑠は胸を高鳴らせる。
子どもが生まれてからというもの、世話にいっぱいいっぱいで中々甘い雰囲気にならずにいた。
久々にしっかりと真希だけを感じて、光瑠は優しく抱きしめ返した。
「どうした」
頭頂部にキスを落として囁くように尋ねる。
夫と妻、そして父と母になったとはいえ、やはりそれよりも前に男と女。
自身の腕の中で、潤んだ目で上目遣いで見つめてくる真希の頬に触れながら、光瑠は自然と顔を近付けた。
急に甘えたくなったのだろうか……?
理由は何でもいい。
疲れていたことさえも忘れた光瑠はあれこれと考えることもやめる。
唇が重なりそうなその時、甘い雰囲気を壊すように真希が光瑠の腕を掴んで大きく揺さぶった。
「隼人がっ……! あの、隼人がっ……」
「っ………─────」
肩透かしにあった光瑠は、少しムッとしながら近付けていた顔を離す。
どうやら潤んだ瞳は誘惑のためではなく、何かを嘆いているらしいことがすぐに分かった。