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【R-34】
第12章 『不知夜月』
根が真面目すぎるからこそ、仕事は絶対なのだ。

「分かったよ。でも、行きは車で送らせて?帰りはタクシーで帰ってくるんだ。良いね?」


「……はい」

随分と過保護だとつい笑みを漏らす真奈に、圭吾は心配そうに顔を覗く。


「……大丈夫よ。普段だって、ちゃんと……圭吾さんの言うこときいてるわ。私……お利口でしょ?」

くてんと頭を圭吾の肩に刷り寄せる。



それだけで、愛しくて堪らない。


「……分かったよ。眠れそうかい?」

「ん……」


真奈に腕枕をする。

髪を撫で付けながら「おやすみ」とだけ呟くと、髪にも頬にもキスを落とす。



唇にも、と圭吾が顔を寄せると真奈が間に指先を入れて慌てて止めにきた。

「ダメっ、うつっちゃうから……。今は、我慢して、ね?良い子だから」


四十を既に越えた夫に「良い子」とは……と、堪えきれずにふっと笑う。



そして、思い出した。



あの時も彼女は一回り以上年上の自分に対して「良い子」と言った事を。
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