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溢れる好きと君へのキス
第2章 **

「そのTシャツ…似合ってるな…やるよ、それ」

絞り出したのがこの言葉だ。
情けなくて失笑する。俺は中学生か(以下略)

「似合ってても嬉しくないですよそんなの!」とふんわり笑う彼女を見てサイダーに口をつける。でもTシャツはいただきますっと呟いたあと彼女はグラスを持つ手をじっと見つめてきた。

「欲しい?」「…ちょっとだけ…」

グラスを取りに行こうと立ち上がると、
「洗い物増えちゃうのでいいです」
と自分が口を付けた反対側からちょっとだけ飲んで
はあっ!と声を出した。そのまま目を閉じてソファーに寄りかかる。

「このまま寝るなよ、風邪引くから。」
「はいぃ…」
「テレビもういいのか?」
「はいぃ…」
「おい、ほらこっちこい、ベッド」

無理矢理歩かせて自分のベッドに放り込み、布団をかける。ベッドライトを消して「おやすみ」と小さく言い、寝室を出た。
グラスをちらっと見る。間接キスなんて一瞬期待してしまった自分が恥ずかしい。残りのサイダーを飲み干して洗い、パソコンの電源をいれる。もうすぐ9月も終わるから会計書類を作らなければ。自分のフォルダから必要書類をUSBに移して明日片山にまとめてもらおう。夏商戦後、売り上げが落ちるのが例年だが今年は人気俳優の映画化の影響で原作が売れると見込んでイベントを大量に仕掛けた。思惑通りイベントは成功し例年の2倍の売り上げをもたらした。思いついたのは片山だ。

気づけば日付が変わって45分経っていた。そろそろ寝るか、とパソコンを閉じてそのままソファーに寝転ぶ。

5分くらいだろうか、そのままぼーっと天井を眺めているとカチャっとドアの開く音がした。起き上がって身構えると、片山だった。

「あの…一人だと怖くなってきて…寝れなくって…」
「寝るまで見ててやろうか?」
「一緒に…ダメですか…?「ダメだ」

自分で言い出した見ててやるのも試練なのに一緒に寝るなんて言語道断、拷問だ。

「…おやすみなさい…」

ペタペタとフローリングを踏む音が聞こえ寝室へ消えていった。ズズッと鼻水をすする音。

(しょうがないか…)

寝室の床で寝る決意をして寝室まで向かった。
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